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上席顧問津田克彦先生のブログ

 【津田克彦の「個人の意見です!」第10回】 「小学校における教科担任制を考える」

上席顧問 津田克彦

上席顧問 津田克彦

2024/05/10 公開

2024/05/21 update

 新しい学年が始まって一か月が過ぎました。やっと新しい学校、学年に慣れてきた頃に、ゴールデンウイークがあり、緊張が少しとれてリフレッシュできた顔で元気に登校する子もいれば、やっと身につき始めた通学や学習の習慣が、また元に戻ってしまった子、さらにゴールデンウイーク中に遊び疲れて元気のない様子の子など、様々です。この時期、新社会人における「五月病」という言葉をよく聞きますが、小学生にとっても同じで、新学期のスタートに少し躓いた子や、学級に上手く馴染めていない子の中には、ゴールデンウイーク明けの登校を渋る子もいます。親は子どもの様子をよく観察(干渉しすぎない)し、原因がどこにあるのかを探る(聞きただすのではなく)ことが大切です。多くの場合は心配しなくても、しばらくぐずりながらも通学するうちに元の様子に戻りますが、中には深刻な困難を抱えはじめている子もいます。そんなときは遠慮しないで、担任の先生やスクールカウンセラーに相談してください。

 さて、今回のテーマですが、「小学校における教科担任制」について考えてみたいと思います。先日、小学校高学年で実施されはじめた教科担任制を中学年にも広げる見通しであると報じられました。「教科担任制」とは中学校以降で実施されている各教科の専門の先生が教える制度です。もちろん学級担任の先生はいますが、HRや行事など以外は、小学校の担任の先生と違い担当の教科でしか子ども達と触れ合うことはありません。それは小学校の児童と違い、学校生活や友達関係など生徒各自でできると判断されているからです。それに対して、小学校の児童は、「各教科の学習」というより、教科の学習を通して「人としての生き方(社会のルールや他人との関係性など)」や「学習の学び方」などを学ぶところです。ですから、一人の先生がいろいろな角度から子ども達を導いていく学校担任制を採用しています。では、なぜ今、小学校で教科担任制(今までのように高学年だけでなく中学年まで)を導入しようという動きが出てきたのでしょうか。まずは、小学校における教科担任制のメリットを考えてみましょう。小学校の先生は各教科すべてを指導する知識と技量を備えていなければなりません。小学校教員免許を取得するには四教科の主要教科はもとより、音楽、図工、体育、家庭(最近では情報や英語教育)などの基本的な知識も必要です。ですから、どうしても薄く浅い知識になりがちです。しかし、教科担任制にすれば、より専門知識を有した先生が質の高い指導をすることができます。また、今まで一人の先生が、一人の目で児童を見てきましたが、教科担任制になれば、多くの先生が一人の児童を多方面から見ることも可能です。児童にとっても、相談できる先生の数が増えることになります。児童や保護者の立場から見れば、多くの先生が、どの学級にも同じように関わってくれることで、今までのような「この先生でよかった。」とか「あの先生はちょっと・・・。」というような不公平感は薄れるかもしれません。

 私の勤務していた学校(私立の小学校)では、勤務する前(50年以上前)から、高学年は教科担任制を採用しています。多くの私立小学校でも同じように教科担任制(あるいはそれに似た形)を採用していると聞きます。高い学力(より深い興味をもつ児童や中学校受験を考える児童に対する教科指導)に似合う指導をするには、指導者も専門知識や指導技術を有しておく必要があるのです。

 しかし、小学校において長年採用されてきている学級担任制に対し、教科担任制は長所の裏返しで短所もあります。担任との関係性の希薄化です。登校してから下校するまで一日中一緒に過ごす学級担任制に対して、一日のうち、担当教科の時間しか接することがなくなります。担任の先生の授業がない日もあります。担任の先生と話しをしたいと思ってもなかなか時間が取れません。また、担任の先生とは一教科しか接することしかないのでその教科が苦手な児童にとっては話(相談)しにくい先生と感じてしまうかもしれません。

 最近の小学校高学年は、何十年か前の中学生の年齢のような発達状況だという意見も多く聞きます。極端な意見としては5(小学校)・4(中学校)・3(高校)制や4(小)・4(中)・4(高)制案も浮上してきています(実際に採用している小中高一貫校もあります)。 そう考えると小学校高学年の教科担任制は採用するメリットが多いのかもしれません。しかし、中学年まで広げるためには現在の小学校教育の在り方を根本的に見直すことが必要でしょう。私のような古い教師からすると、「教室にいつも担任の先生がいる」「一年間ずっと担任の先生と教科指導だけでなく行事や雑談まで一緒に過ごす」ことで担任の先生と過ごした思い出が生まれるのだと思います。教師側から見ても、一人ひとりの児童との時間(思い出)が宝物のように残っています。

 私の時代にくらべ、学校運営、学級経営が難しい時代です。先生方の負担も勤務時間の問題だけではなく、児童生徒指導や教科指導の負担も増えています。中学年(あるいは小学校全体)から教科担任制の導入には「多くの先生方で児童を見守ることができる。」「教科研究が一教科だけで済む。」など、先生側から見ても多くのメリットがあります。ただし、先生方側のメリットだけで導入されることがないように願っています。
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上席顧問 津田克彦

上席顧問 津田克彦

元私立小学校校長、元大阪府私立小学校連合会会長。 プラチナム学習会では保護者相談、進学指導、及び、「小学校受験対策集団コース」を担当。元私立小学校校長の長年の経験を活かした、噂に左右されない本質的な指導で万全の準備を進めます。特に小学校入学後に後伸びできる子ども達の指導に努めています。

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